土で、火で、飯を食う。

昔の「住宅」といえば、大黒柱・塗り壁・襖・土間・瓦、そして「食」といえば、地域の特色ある郷土料理・旬の食材を使った季節料理・冷蔵庫の無い時代の知恵である保存食など、住宅に限らず、昔の暮らしには人々の知恵がずいぶん生かされていました。
土間は今のキッチンで食事の準備をするところでした。この土間には水場があり竃(かまどは、へっつい・おくどさんなど地方によって呼び名があります)がありました。
この竃はなかなか優れものです、薪をくべて、食材を焼く、煮る、炊くことができる、暮らしの中で最も大切なものでした。

竃の原点は縄文時代で、縄文時代早期に使われていた煮炊き用の土器が既に見つかっていることから、形こそ違うもののこの時代から竃はあったと思われます。こういう言い方をすると、遠い昔の話のように思えますが、一般家庭の台所から竃が消え始めたのは戦前から戦後にかけてのことです、まだつい最近まで一般家庭の台所には竃はありました。もう少し大袈裟に言えば、縄文時代の台所は、つい数十年前まで生きていたことになります。
今では、土間が床に変わり、その床の上にはシステムキッチンという。

名の竃や水場が付き、非常に便利で使いやすく、欲しいときには直ぐ火が付けられ、またタイマーをセットすれば朝起きたときにはご飯が炊けているという、すごい道具にとって変わりました。
道具が便利になったのは良いけれど、ひねるだけ付くガスや、火の見えない電気を日々使っていると、火を火だと思わなくなり、あげく、ぼやを出したり、火傷をしたりする。どこかで生の火を見ても、それを自分の家の火に置き換えて、もったいないと思ったりすることも無縁なのです。
しかし、縄文時代から続いてきた火と人との関係を思い出すことは、未来の火を考える上でどうしても必要だという気がします。
そうしないと、火そのものを忘れる事になってしまいそうです。
そしてもう一つ、土間の時代は、そこを毎日乗り降りし、竃で使う薪やシバを確保し、それをくべ、夜になれば炭になった薪に灰をかけて、朝になるとその灰をどけて、また薪をくべる。
そんな繰り返しが主婦にとってとても大事な仕事でした。
便利な時代ではないけれど、生活の中で必要なものがちゃんと見えた無駄のない暮らしを、便利な今だからこそ覚えておきたいと思います。

竃の原点は縄文時代で、縄文時代早期に使われていた煮炊き用の土器が既に見つかっていることから、形こそ違うもののこの時代から竃はあったといわれている。一般家庭の台所から竃が消え始めたのは戦前から戦後にかけてで、まだつい最近まで一般家庭の台所には竃は存在していた。

昔の「食」といえば、地域の特色ある郷土料理・旬の食材を使った季節料理・冷蔵庫の無い時代の知恵である保存食が基本である。そういった暮らしの中での竃はたいへん優れもので、薪をくべて、食材を焼く、煮る、炊くことができる、かつての暮らしの中で最も大切なものであったといえる。

古くからの竃のある生活は、土間を毎日乗り降りし、竃で使う薪やシバを確保し、それをくべ、夜になれば炭になった薪に灰をかけて、朝になるとその灰をどけて、また薪をくべるというものだった。もちろん手間はかかるが、現代のようにスイッチでは点かない火だからこその良さが竃の火にはあるといえるだろう。